2024年01月29日
はじめに
新築住宅では引き渡し後に不具合が見つかる、事前に打ち合わせた内容と異なる施工がされていたなどのトラブルが発生することもあります。
この記事ではこれから新築住宅の購入を検討されている方、あるいは実際に新築引き渡しトラブルで悩まれている方のために、弁護士が引き渡しトラブルの事例や対処法、未然に防ぐ方法について解説します。
目次
「引き渡し」とは?
戸建住宅やマンションを購入する際には「引き渡し」が行われます。これを流れでなんとなく済ませてしまうと、後々大きなトラブルにも発展しかねません。まずは引き渡しの法的な意味合いや引き渡しの際に行われることについて見ていきましょう。
「引き渡し」は一大イベント
引き渡しとは工事が完了して新築住宅が完成した後に、物件が施工業者から施主に受け渡されることを指します。ハウスメーカーや工務店によっては引き渡し式を行い、スタッフや親族が集まってお祝いしてくれます。
しかし、引き渡しは単なるセレモニーではありません。法的には引き渡しによって物件の所有権が施工業者から施主に移るとされます。引き渡しによってはじめて施主は物件の所有者となるのです。
夢のマイホームが完成して心が躍る気持ちがあるかとは思いますが、しっかりと気を引き締めて引き渡しに臨みましょう。
新築の引き渡しで行われること
新築住宅の引き渡しの際には以下のようなことが行われます。
- 鍵の受け渡し
- 最終検査・説明
- 書類の受け渡し
- 登記・決済手続き
前述のとおり、施工期間中は施工業者が物件の所有権を持っていると考えられます。業者が材料を手配し、施工を行っているからです。施工期間中は施工業者が鍵を管理しているので、施主に鍵を引き渡します。
同時に引き渡しの際には住宅に不具合がないかを施主立会いのもと最終チェックを行い、住宅設備の使用方法などの説明がなされます。その上で建築検査済証、設備の保証書、取り扱い説明書などの書類が引き渡されます。
また、引き渡し日には登記手続きや決済手続きも行われます。銀行で施主と施工業者の担当者、金融機関の担当者、司法書士が集まり、住宅ローンの決済を行います。銀行口座にいったん融資金額が入金され、それが施工業者の口座に送金されます。この手続きをもって住宅ローンの利用が開始となるのです。
その後、司法書士が必要書類を作成し、法務局で登記手続き、具体的には所有権の保存手続きと抵当権の設定が行われます。
新築の引き渡しの際によくあるトラブル~戸建て編~
以上のような引き渡しの一連の流れを経て、新築住宅の所有権が施工業者から施主に移るのです。ここからは新築の引き渡しの際によくあるトラブルの事例を、戸建て、マンションという順番で見ていきましょう。
内装・外装の傷や汚れ、設備の欠陥
まずは内外装の傷や汚れ、住宅設備の欠陥などが挙げられます。以下のようなトラブルが具体例です。
- 壁や床、建具などに傷や汚れ、剥がれが見つかった
- 外壁に傷や汚れ、剥がれが見つかった
- 床が傾斜している
- 基礎や外壁がひび割れている
- 雨漏りがする
- キッチンや浴室などの設備に不具合が見つかった
非常に多いのが内外装の傷や汚れです。施主の立場からすると、真新しい新築住宅に傷や汚れがあるのは大変ショッキングな出来事です。施工業者も事前にチェックして必要に応じて清掃・修復しているはずですが、どうしても施工時に傷や汚れがついてしまったのを見逃して引き渡されてしまうケースもあります。
また、床が傾斜している、基礎や外壁がひび割れを起こしている、雨漏りがするといったトラブルも発生しがちです。これらの不具合は住宅の安全性や耐久性にも大きく関わりますので、より深刻といえます。施工業者のミスや手抜き工事でこうしたトラブルが発生するケースが多いです。
また、キッチンや浴室などの住宅設備に不具合がある、傷や汚れがあるといったトラブルもあり得ます。こちらは施工不良のほか、その設備自体が不良品であるケースも考えられます。
事前の依頼・説明とは異なる仕様
事前に打ち合わせた内容と異なった仕上がりになっているというケースも多いです。具体的には以下のような事例が挙げられます。
- 内外装の色やデザインがイメージしたものと違う
- 壁や床に指定した素材と異なるものが使われている
- 指定したものとは異なる建材や設備が使われている
- コンセントやスイッチなどが指定した場所とは異なる場所に施工されている
- 施工されているべき施工がなされていない
新築住宅を建築する際には施主と施工業者の担当者が何度も打ち合わせをして住宅の仕様を決めていきます。特に注文住宅の場合、壁紙や床材の色やデザイン、建具の種類など、非常に細かい部分まで打ち合わせます。
しかし、上記のように施主の要望やイメージとは異なる仕上がりになってしまったという事例も非常に多いのです。施工業者の営業担当者が勘違いをした、打ち合わせの内容をよく把握していなかった、設計担当者や現場の施工担当者に施主の要望が伝わっていなかった、設計担当者や施工担当者がミスをしたなどの原因が挙げられます。
逆に施主が要望を伝え忘れていた、伝えたと思いこんでいたけど伝えていなかった、誤解を招きやすい表現や曖昧な表現で要望を伝えてしまったというように、施主がミスをしたという事例もよくあることです。また、サンプルで色やデザイン、質感を確認したとしても、実際に施工してみると見え方や感触が違って感じられ「話が違う」となるケースもあります。
新築の引き渡しの際によくあるトラブル~マンション編~
以上で一戸建ての新築住宅の引き渡し時によくありがちなトラブルについてご説明しました。ここからは新築の分譲マンション、リフォーム後のマンションの引き渡しの際に発生しうるトラブルについて見ていきましょう。
新築分譲マンションの引き渡しトラブル
基本的にはマンションについても内外装に傷や汚れがある、設備に欠陥がある、事前の依頼や説明とは異なる仕様になっているなど、一戸建てと同様のトラブルが発生するケースが多いです。
それらに加え、新築マンションでは以下のようなトラブルも発生する可能性があります。
- 眺望・日当たりが事前に説明されていたものと違う
- 生活環境が悪い
- モデルルームの雰囲気と実際に引き渡された部屋の雰囲気が異なっている
特にマンションの高層階、タワーマンションを購入される方のなかには眺望や日当たりを期待されている方も多いかと思います。入居してみたら眺望が事前の説明やイメージと全然違っていた、日当たりが悪かったというケースもあり得ます。営業担当者が誤った説明をした、誤解を与えるような表現をしたというような事例もあれば、引き渡し前にマンションの付近に大きな建物が建ってしまったということもよくありがちです。
また、入居したら騒音や公害などに悩まされるというケースもあります。特に近隣に鉄道が走っている、上空が飛行機の離発着ルートになっている、近隣に工場があるといった立地はどうしても騒音がうるさくなりがちです。眺望や日当たりの件もそうですが、モデルルームを見学するだけではなく、しっかりと現地で環境を確認する必要があります。
また、モデルルームの雰囲気と実際に引き渡された部屋の雰囲気が全然違うという事例も多いです。モデルルームは部屋の雰囲気を知ってもらう役割があるのですが、同時にデベロッパーの営業ツールでもあります。マンションを購入してもらえるよう、高級な家具や最新の家電を入れて見栄えを良くしているのです。そのため、モデルルームと実際に入居した後にギャップを感じることもあります。
リフォーム後の引き渡しトラブル
最近は中古でマンションを購入して自分好みにリフォームされるという方も多いです。リフォームの引き渡しでは以下のようなトラブルが想定されます。
- 事前の打ち合わせや説明とは異なる仕上がりになっている
- 内装や設備に傷や汚れがついている
- 住宅設備に不具合が発生している
- 工期が遅れる
- 近隣住民とトラブルが発生した
やはりリフォームについても、事前の打ち合わせや説明と異なる仕上がりになっている、内装や設備に傷や汚れがついている、住宅設備に不具合が発生しているといったケースが多いです。
また、それに加えて工期が遅れるという事例もよくあります。施工業者の見通しが甘かった、施工が想定以上に難航している、天候不良が続いて施工ができなかった、資材が予定通りに入ってこなかったなど、原因もさまざまです。
また、近隣住民とのトラブルはリフォームならではです。中古マンションのリフォームは、すでに近隣に住民が入居している状態で行われます。リフォーム工事によって騒音や粉塵が発生する、共有部に塗料や薬剤などの汚れが付着する、工事車両が通行を妨げているといった理由で近隣住民からクレームが発生する、トラブルに巻き込まれるなどの事例があります。こうなるとご近所さんとの関係が悪化して入居後の生活にも支障をきたしかねません。
新築の引き渡しトラブルを未然に防ぐためのポイントと注意点
新築住宅・マンションあるいはリフォームマンションの引き渡しの際には、以上のようなさまざまなトラブルが発生する可能性があります。ここからはトラブルを未然に防ぐ方法について見ていきましょう。
新築の引き渡しトラブルを未然に防ぐための3つのポイント
新築住宅・マンション、リフォームマンションのトラブルを防ぐためには、以下の3点を意識しましょう。
- ①引き渡し前に確認をしっかりする
- ②未完成の段階で引き渡しを受けない
- ③やりとりをメールや文書で残す
一般的なハウスメーカーや工務店、リフォーム業者は工程ごとにしっかりと施工されているか?異常はないか?を検査します。しかし、業者だけに任せっきりにせず、必ずご自身の目でも仕上がりを確認しましょう。まっとうな施工業者であれば引き渡し前に施主立ち会いのもと最終検査を行います。
また、最終チェックを行って修繕や追加工事が必要になった場合は、それらが完了した後で引き渡しを受けるようにしましょう。引き渡し後に修繕や追加工事が必要になった場合、追加費用を請求される可能性があります。
また、引き渡しに関するトラブルは施主と施工会社との見解の相違や聞き間違い、伝え漏れなどのコミュニケーションミスで起こるケースも多いです。「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、打ち合わせの内容や要望は口約束だけではなく必ずメールや文書、メモなどで残しましょう。
新築の引き渡しトラブルの3つの注意点
実際に引き渡し時に以上のようなトラブルが発生しても希望通りに対応してもらえない可能性もあります。以下の点には十分注意しましょう。
- ①細かい傷や汚れは対応してもらえない可能性がある
- ②助成金については説明義務がないので事前に調べておく
- ③自分でトラブルを解決しようとしない
明らかに施工業者の過失もしくは故意でついたような傷は修正に対応してくれます。しかし、施工の過程でどうしても細かい傷や汚れはついてしまいますので、あまりにも細かいものである場合は対応してくれない可能性もあります。また、引き渡し後に傷や汚れを指摘した場合、それが施工業者によるものなのか、施主によるものなのか、責任の所在がわからないため、有償での対応になる可能性もあります。必ず引き渡し前にチェックして修正を依頼しましょう。
助成金を活用すれば住宅の新築やリフォームに係る費用の一部を国や自治体に補助してもらうことが可能です。しかし、後から助成金制度の存在を知ったという方、助成の要件に合致していることを知ったという方は助成を受けられません。ハウスメーカーや工務店はサービスとして助成金を使うよう提案してくれるケースもありますが、基本的には説明義務はありません。助成金制度の有無や要件については施主側でも事前にしっかりと確認しておきましょう。
仮にトラブルが発生した場合は自分ひとりで対応しないことも重要です。施工業者から反論を受けて泣き寝入りすることにもなりかねません。また、何度も話し合いを重ねていると、時間もかかり精神的にも消耗してしまいます。トラブルが発生した場合は法律に詳しい専門家に相談されることを強くおすすめします。
新築の引き渡しトラブルは弁護士に相談をして対策を!
新築住宅・マンション、リフォームマンションのトラブルが発生した際の相談先としては弁護士がおすすめです。法律の知識があり、施主の方の味方となって施工業者の担当者と交渉します。また、交渉が難航して調停や訴訟などの法的措置をとる場合でも、最初から弁護士に相談していればスムーズかつ有利に手続きを進めることが可能です。
賃貸立ち退きトラブル相談は立ち退き案件をはじめさまざまな不動産トラブルを専門としている法律事務所です。もちろん新築住宅・マンション、リフォームマンションの引き渡しトラブルも得意としております。
話しやすさと解決スピードには定評あり。ご依頼者様の立場になり親身にお話をお伺いし、早期にご依頼者様の望まれるかたちでの解決を目指します。
初回相談1時間は無料です。まずは新築住宅・マンション、リフォームマンションに関するお悩みをお聞かせください。