2023年01月26日
目次
はじめに
賃貸物件では賃借人(入居者)の長期間にわたる賃料の不払いや騒音トラブル、その他規約違反を理由に、賃借人に立ち退いてもらわなければならないこともあります。その際には賃貸人である大家さん・オーナーさんや管理会社担当者が賃借人に対して立ち退き交渉を行うことになります。
問題がある賃借人に、できる限りスムーズに立ち退いてもらうためには、弁護士に相談・依頼することが有効です。この記事では立ち退き交渉を弁護士に相談・依頼するメリットや注意点、弁護士の選び方や立ち退きまでにかかる費用について解説します。
1.立ち退き交渉とは?立ち退き交渉の流れを解説
●立ち退き交渉には2つの場面がある
立ち退き交渉とは賃借人に対して賃貸している住宅や店舗、オフィスなどから退去してもらうための交渉のことを指します。立ち退きには
(1)賃借人側に契約違反等がなく、建物の老朽化など賃貸人の都合で立ち退きを求めるケース
(2)賃借人側に賃料不払いなど契約違反等があって、それを理由に立ち退きを求めるケース
の2つのパターンがあります。
(1)の場合は立ち退き料を支払う必要があるケースも多いですが、交渉はスムーズにいきやすい傾向があります。(2)の場合であれば立ち退き料は基本的に不要ですが、交渉が難航することも多々あります。今回の記事では(2)のケースで、契約違反者がなかなか立ち退いてくれない場合について解説してゆきます。
●立ち退き交渉は違法行為にならないよう慎重に進める必要がある
立ち退き交渉を行う場合には、法律違反行為にならないよう注意する必要があります。
建物などの不動産の賃借人は主には「民法」と「借地借家法」によって権利を保護されています。一度賃貸借契約を締結すると、たとえ家賃の滞納などの契約違反行為があったとしても、賃貸人は一方的に賃借人を追い出す、勝手に部屋の荷物を処分する、鍵を交換することいった行為はできません。
どうしても立ち退きが必要で交渉が難航している場合は、調停や裁判で司法に介入してもらうのが有効です。
●立ち退き交渉の流れとは?
前述のとおり、賃貸人は賃借人をいきなり追い出すことはできません。まずは口頭や書面で「契約違反の状態を解消してほしい」という意向を伝えます。書面を送る場合は内容証明郵便で郵送しましょう。契約違反の状態が解消されればそれで話は終わりですし、この段階で賃貸人と賃借人の双方が合意して任意で立ち退いてもらえる可能性もあります。ただし、そううまくはいかないケースも多いというのが現実です。
仮に契約違反の状態が解消されない場合は、賃貸人から賃借人に対し、賃貸借契約解除を通知します(これも内容証明郵便を利用するのがよいでしょう)。それでも賃借人が立ち退きに同意しない場合はいよいよ裁判です。裁判期間中に賃借人が自らの意志で退去することもあります。立ち退かない場合は裁判所から判決という形で立ち退きを命じてもらいます。それでもなお立ち退かない場合は、強制執行という手続きで荷物や賃借人の身柄を物件から出し、強制的に立ち退きを実現することもできます。
以上が立ち退き交渉から立ち退きまでのおおまかな流れですが、実際の状況や賃借人の対応などで、解決までの流れが異なります。交渉の段階で弁護士を入れるのがベストですが、交渉がうまくいかず裁判を起こす場合には、弁護士の力が必要不可欠というべきでしょう。
2.立ち退き交渉を弁護士に相談・依頼するメリット
①スピード解決により被害額を大幅に軽減することができる
書面や口頭での交渉であれば賃貸人自身でも行うことができますが、交渉が難航するケースも少なくありません。
たとえば、家賃滞納で立ち退き交渉を行う場合、交渉が長期化すればするほど、本来得られるはずの家賃収入が得られない期間も延びてしまいます。騒音トラブルや近隣トラブルの場合は、長引くことで他の入居者が転居してしまい他の部屋が空室となったり、悪評が立って新規入居者が集まらなくなってしまったりといったリスクがあります。
弁護士に依頼して賃借人を早期に立ち退きさせることができれば、被害を最小限に食い止めることが可能です。
②立ち退き交渉に関する負担が軽減され、解決までの道筋をつけることができる
立ち退き交渉は非常に根気がいる仕事です。何度話し合いを持ってもきちんと対応してもらえなかったり感情的な対応をされたりといったことが続けば、賃貸人にとっては大きなストレス要因となります。家賃収入が得られないことのダメージが大きいのは当然ですが、前述のように他の入居者の転出といった事態になると、ストレスやダメージは二重・三重になりかねません。
このような事態を避けるため弁護士に依頼し、賃貸人の代わりとなって立ち退き交渉を進めてもらいましょう。交渉を代理してもらうことでストレスが軽減されることはもちろん、早い段階で解決までの道筋も示してくれるため、トラブル終息までの見通しがつき安心できます。弁護士による適切な交渉により、賃借人があっさりと交渉に応じ立ち退きを実現できる可能性もあります。
3.立ち退き交渉を弁護士に相談・依頼する際の注意点
①【重要】できるだけ早めに相談する
可能であれば立ち退き交渉を行う前から弁護士に相談されることをおすすめします。特に立ち退き交渉の経験豊富な弁護士は先を見越して戦略的にアプローチしますので、早期解決の可能性が高くなります。
前述のとおり、交渉が長期化すれば被害額が大きくなり、賃貸人の経済状況が悪化してしまうかもしれません。そうなってしまうと、費用をかけて弁護士に依頼することも難しくなってしまうかもしれず、ただただ損失だけが膨らんでいくといった事態にもなりかねません。結局、早期に弁護士に相談し解決を目指すことで、損失額を最小限に抑えるのがベストであるケースが多いといえるでしょう。まずは相談だけでもしてみることを強くお勧めします。
②関係する書類をまとめておく
立ち退き交渉や訴訟の際に重要となるのが、賃借人と賃貸契約を締結した際に交わした賃貸借契約書や重要事項説明書です。これらの書類をもとに賃借人が契約違反をしているかどうか?立ち退き交渉が正当な事由によるものかどうか?を判断することができます。
弁護士に依頼した際には必要な書類を集めるよう指示されます。早期解決を目指すためにも、早めに準備しておきましょう。少なくとも賃貸借契約書や重要事項説明書は相談前から用意されておかれることをおすすめします。
また、可能であれば、物件の登記情報や固定資産税評価証明書、間取り図なども準備しておくと万全です。
③賃貸借契約の経緯をまとめておく
どのような経緯で賃貸借契約に至ったのか?どのような事情によって賃貸人と賃借人の関係が悪化したのか?なぜ賃借人に退去してほしいのか?いつから問題行為が発生しているのか?といった情報を集めることも大切です。必要書類とは別に、情報を時系列で整理してメモに残しておきましょう。
弁護士に相談した際にはこうした情報に関するヒアリングもなされます。あらかじめ整理されていれば、よりスムーズな相談が実現でき、早いうちに見通しを教えてもらえることに繋がります。
4.立ち退き交渉を依頼する弁護士の選び方
①不動産トラブル・賃貸トラブルに注力している
弁護士でも人それぞれ得意分野が異なります。刑事が得意な弁護士も民事が得意な弁護士もいます。さらに、民事の中でも会社同士の取引などに関係する企業の仕事ばかりを扱う弁護士もいます。したがって、立ち退き交渉に関しては不動産トラブルや賃貸トラブルを得意とする弁護士を探すことが大切です。ホームページなどに「家賃滞納」「立ち退き」と掲げている弁護士であれば、情熱をもって立退き交渉の問題に取り組んでいることがわかります。
また、実際に問題を解決した経験があるかどうかは、過去の解決事例などが掲げられていればその部分の記載をチェックしてみましょう。
②弁護士の人柄・人間力
弁護士に立ち退き交渉を依頼した場合、書面や口頭での交渉から始まり、長くなると裁判・強制執行まで一定の期間、弁護士に頼ることになります。そのため、実力や知識だけでなく、ストレスなくコミュニケーションが取れるかどうかという人柄や人間力も大切となります。相談したら迅速に対応してくれるか?親身に寄り添って話を聞いてくれるか?不安や疑問点に真摯に答えてくれるか?といったところを初回の相談で見極めてください。
また、立ち退き交渉では依頼者である賃貸人だけでなく賃借人に対しても、真摯に言い分を聞いてあげたり丁寧に賃貸人の意向を説明するといった、人間味のある対応が大切です。弁護士が賃借人を過剰に攻撃するなど対応を誤ると、賃借人の感情を損ないかえって交渉が難航してしまうこともありますす。最悪、賃貸人が逆恨みをされてしまうといったリスクも考える必要があります。
③費用の内訳が明確である
弁護士に支払う料金にはさまざまな種類があり、支払うタイミングも複数設定されているのが一般的です。費用の内訳や支払い方法、タイミングを明確に示している弁護士を選ばれることをおすすめします。
料金体系や支払い方法、タイミングが複雑だと、本当にその費用が妥当な金額なのかが判断しづらくなってしまいます。また、家賃収入の減少や損害が発生している中で、今後の生活や事業の見通しを立てるためにも、内訳がしっかりと明示されている弁護士を選ぶことが大切です。
5.弁護士に相談・依頼する場合にかかる費用
弁護士に支払う費用としては、大きく「相談料」「着手金」「報酬金」「実費・日当」の4つに分けられます。
相談料とは、その名のとおり弁護士に相談する際にかかる費用で、1時間あたり5,000~1万円が相場です。
着手金は弁護士が事件に着手する際に支払う費用です。問題となる物件の価格の何パーセント、という方法で算出されることが多いです。定額にしている弁護士もいるようです。
報酬金は事件が解決した際に弁護士に支払う費用です。「成功報酬」とも呼ばれます。こちらも、物件の価格の何パーセントという方法で算出されることが多く、定額の場合もあります。
実費は弁護士が事件解決のために要する経費のことです。交通費や宿泊費、通信費などが挙げられます。また、出張が発生した場合は、別で日当が必要です。
まとめ
立ち退き交渉は本人が行うこともできますが、根気が必要で、精神的にも、金銭的にも、大きな負担がかかります。弁護士費用は決して安いものではありませんが、早期に立ち退き交渉を依頼することで、むしろ今後発生する損失を抑えられる可能性が高くなります。
賃貸立ち退きトラブル相談窓口なら、経験豊富な弁護士がスピーディに解決。ご依頼人様に寄り添い、話しやすさにも定評があります。初回相談は1時間無料なので、立ち退きトラブルや家賃滞納でお困りの大家さん・オーナーさん、賃貸管理会社の担当者様は、お気軽にご相談ください。
賃貸立ち退き
トラブル相談窓口
家賃滞納・家賃回収・立ち退き問題
弁護士監修記事
弁護士菊地 智史SATOSHI KIKUCHI
杉並総合法律事務所 所属
建物明渡し、更新料請求など借地借家関係の事件を多数解決
宅建士、敷金診断士の知識を活かし、様々なトラブルに対応