都市計画道路の工事で立ち退きを要求されたら?立ち退き料や対処法を解説

2024年02月26日

都市計画道路工事に伴う立ち退きを求められたら素直に応じなければならないのでしょうか?立ち退きの拒否や立ち退き料の増額は交渉できる?

この記事では不動産トラブルを専門に扱っている弁護士が、都市計画道路工事に伴う立ち退きを求められた際の対処法について解説。気になる立ち退き料の相場や立ち退き拒否の可否についてもご説明します。

都市計画道路とは

都市計画道路とは各自治体が都市計画に基づいて敷設する道路のことを指します。都市計画道路はその地域の交通インフラを担う幹線道路としての役割が期待されるため、片道2車線以上の大規模なものとなるケースが多いです。都市計画道路の多くは1930~40年代に敷設計画が決定されていますが、実際には未だに工事が着手できていないケースも少なくありません

その要因となっているのは用地の取得です。都市計画道路の予定地上に住宅が存在していれば、立ち退いてもらわない限り道路を敷設することができません。住宅の敷地が都市計画道路の予定地上にある場合、今回の主題となっているように自治体から立ち退き要求をされるケースがあるのです。

都市計画道路工事による立ち退き

都市計画道路はその地域の交通の利便性や住民の安全性の向上、経済の発展に大きく寄与する道路です。しかし、一方で都市計画道路の予定地上に住宅や職場がある住民には、それぞれ生活や営みがあり、転居に伴って経済的あるいは精神的負担を強いることにもなるため、おいそれと立ち退かせるわけにもいきません。

都市計画道路の工事に伴い立ち退きを求められる場合は、立ち退き料や補償が支払われることが一般的です。

都市計画道路工事の立ち退き料の相場

都市計画道路の工事に伴う立ち退きの代償として、都市計画道路の用地上の住居がある住民には立ち退き料が支払われます。「◯◯円」という相場はありませんが、公示価格や基準地価によって決まります。たとえば公示価格が1㎡あたり20万円、都市計画道路の工事によって100㎡失うと仮定すると、20万円×100=2,000万円となります。

また、立ち退き料はこれに加えて立ち退きに伴って必要となる転居費用や保険の加入にかかる費用、迷惑料や慰謝料分が加算されます

特に重要となるのは迷惑料や慰謝料の部分です。たとえば転居することによって長年住み慣れた土地を離れる、ご自身やご家族が仕事を辞めなければならない、子どもが転校しなければならないといった事情があれば、それが加味されることもあります。立ち退き料は交渉次第で増額される可能性もあり、弁護士が交渉を代理するケースも多いです。

都市計画道路工事の立ち退きには補償がつく?

都市計画道路の工事に伴う立ち退きを要求された場合、補償金も受け取ることが可能です。主に既存の建物の解体に要する費用、同等の建物を別の場所に建築する費用、移転先への引っ越しに要する費用、新しい建物が完成するまでの間に一時的に居住するための費用(家賃など)が補償されます

補償の支払いについては都市再開発法第97条に「施行者は、前条の規定による土地若しくは物件の引渡し又は物件の移転により同条第一項の土地の占有者及び物件に関し権利を有する者が通常受ける損失を補償しなければならない。」と定められています。前述の立ち退き料が支払われない場合は、収用委員会に補償金の支払いを申請することが可能です。

ただし、既存の建物を超えるような大きい建物を建てる場合は全額補償されません。たとえば既存建物の床面積が150㎡であった場合、移転先に200㎡の建物を建てようとしても、150㎡分のみが補償対象になるのです。また、引っ越しや一時的な居住にかかる費用などは想定外に高額となる場合もあります。

やはり補償に関してもなるべくご自身に有利な条件となるよう交渉をし、場合によってはプロに相談するのも重要です。

都市計画道路工事の立ち退きまでの手順

立ち退きまでの主な流れとしては、まず自治体によって道路の敷設計画が立てられ、地権者や地元の自治会に対して工事に関する方針や計画の説明があります。

その後、現況測量や用地測量などの調査が実施され、予定地の建物や樹木などの状況、立ち退きの対象となる土地面積の確定がなされます。同時に国庫補助金や都道府県・市町村支出金などの資金調達も進められます。

その後、いよいよ地権者との立ち退き交渉です。都市計画道路の工事計画に関する説明や立ち退きの依頼、立ち退き料や補償料の支払いに関する提案などがあります。

地権者が立ち退きに応じる場合は書面で契約を締結し、実際に立ち退き開始です。用地の分筆や所有権移転登記手続きが行われ、地権者は住宅や建物から立ち退き、移転先への引っ越しがはじまります。立ち退き料や補償料は地権者の銀行口座に振り込まれます。

地権者全員の立ち退きが完了したら、既存建物の解体と都市計画道路の工事が開始されます。地権者は新しい建物ができるまで賃貸物件などに仮住まいをし、新居が完成したら入居します。

以上が都市計画道路の工事に伴う立ち退きの主な流れです。地権者に特に大きな影響が及ぶのは立ち退き交渉以降となります。

都市計画道路工事による立ち退きは拒否できる?

以上のように都市計画道路の用地上に建物がある場合、工事前に自治体の担当者が地権者のもとに立ち退きを依頼してきますが、それを拒否することはできるのでしょうか?立ち退きのタイミングも併せて見ていきましょう。

立ち退きのタイミング

立ち退きを要求されたとしても、すぐに立ち退かなければならないというわけではありません。基本的に道路の工事を行う事業者は土地や建物の所有者、あるいは物件を借りている借主の権利を守って工事を進める必要があります。「直ちにここから退去してほしい」と言われたり、同意しないまま工事が開始されたりということはありませんのでご安心ください。

前述のとおり、自治体の担当者から立ち退きを求められた場合は、立ち退きの時期や立ち退き料、補償料に関して話し合いをすることになります。交渉の結果双方の合意が得られたら契約を締結し、その後仮住まい先や移転の準備を行い、はじめて立ち退くという流れとなります

特に立ち退きを依頼された直後は不安に感じられるかもしれませんが、落ち着いて対応しましょう。

立ち退きを拒否する場合

結論からいうと都市計画道路の工事に伴う立ち退きを依頼された場合、これを拒否することはできません。もちろん、行政は最大限地権者に影響が出ないよう配慮してくれるはずですが、立ち退きを拒否されたからといってそれに応じていたら道路はいつまでたっても敷設できません。

都市再開発法第96条には立ち退きを要求された地権者は物件を明け渡さなければならないと定められています。また、都市再開発法第98条には立ち退きを拒否された場合、行政は強制的に立ち退きをさせる行政代執行ができることが定められています。

もちろん、立ち退き交渉をして立ち退きの条件を話し合うことは可能です。地権者と行政がお互いに納得できる落とし所が見つかるまで長引くこともよくあります。しかし、不当に立ち退きを拒否しているとみなされた場合は、強制的に立ち退かされてしまうこともあり得るのです。ただし、行政代執行がなされたとしても、相応の補償金は支払われます。

都市計画道路工事の立ち退きトラブルを解決するために

都市計画道路の工事に伴う立ち退きの際には揉め事やトラブルが発生するケースも少なくありません。最後に立ち退きに関するトラブルを防ぐためのポイントについてご紹介します。

行政担当者からしっかりと話を聞く

まずは都市計画道路工事の担当者からしっかりと話を聞いて情報を集めることが大切です。立ち退き交渉が始まる前には地権者や自治会向けに説明会が開催されるのが一般的な流れとなります。「自分には関係ない」「面倒だから」と思わず、しっかりと参加しましょう。この際に立ち退きに関する情報を収集していれば、余裕をもって対策を考えることができます。

現況測量調査や用地測量調査、資金調達などの準備が終わったらいよいよ担当者が立ち退き交渉に訪れます。都市計画道路工事の内容や立ち退きまでのスケジュール、立ち退き料や補償料の金額や内訳などをしっかりと聞いておきましょう。可能であれば話し合いの記録を残しておくことをおすすめします。

立ち退きたくないという想いが強い、あるいは立ち退きの条件に納得できない場合はしっかりとご自身の意見を主張しましょう。なぜ立ち退きたくないのか?立ち退きに関してどれくらいの費用がかかるのか?といった根拠をしっかり示せれば、担当者もそれに合わせた提案をしてくれる可能性があります。そのためにも移転先の新築や解体にかかる費用や引っ越しにかかる費用、仮住まいの家賃などもしっかりとリサーチしておくことが大切です。

弁護士に相談する

都市計画道路工事の立ち退き交渉は個人で対応するのはなかなか難しいと言わざるを得ません。相手は何度も立ち退き交渉を重ねてきたプロであり、交渉力はもちろん法律や不動産関連の知識も豊富です。満足できるような条件になっていないにもかかわらず立ち退いてしまって後悔されている方も少なくありません。

そこで、立ち退き交渉は弁護士に相談されるのも一つの方法です。特に不動産を専門としている弁護士、立ち退き交渉の実績がある弁護士であれば、依頼者の方に代わってしっかりと交渉を進めてくれるはずです。

都市計画道路工事の立ち退きを弁護士に相談するメリット

まず弁護士に依頼するメリットとしては手間や時間を大幅に軽減できることが挙げられます。立ち退き料や補償料を交渉する際には、立ち退きによる損失をシミュレーションして担当者に伝えなければなりません。
さまざまな情報を収集しなければならないため、非常に労力がかかりますが、弁護士に依頼すればこれらの手間を省くことができます。

この記事のまとめ

弁護士は交渉のプロであるため、立ち退き料や補償料の増額などの要望が通る可能性も高くなります。たとえ交渉が難航し訴訟などを起こす場合でも、最初から弁護士が交渉にあたっていれば有利に進めることが可能です。

賃貸立ち退きトラブル相談窓口は不動産の問題解決に特化した法律事務所です。都市計画道路工事の立ち退き交渉の実績もございます。ご依頼者様の想いや意見をしっかりとお伺いし、可能な限り有利な条件になるよう交渉を進めます。初回1時間は無料で相談いただけますので、まずはお気軽にお悩みをお聞かせください。

弁護士監修記事

弁護士 菊地 智史

弁護士菊地 智史SATOSHI KIKUCHI

杉並総合法律事務所 所属
建物明渡し、更新料請求など借地借家関係の事件を多数解決
宅建士、敷金診断士の知識を活かし、様々なトラブルに対応

関連記事

2023年8月24日

家賃を滞納したらどうなる?取るべき対応を弁護士が教えます!

2023年6月26日

賃貸で立ち退き拒否されたときの対処法とは?交渉方法から事例まで解説!

2023年5月25日

家賃滞納の時効は5年!時効を更新させる方法とは?

家賃滞納の督促

2023年6月1日

家賃を滞納された際に大家ができる3つの督促方法