大家都合で退去する時の立ち退き料について解説

2023年07月26日

はじめに

賃貸物件では家賃を滞納したり迷惑行為をしたりなどの入居者が問題を起こした場合、大家が立ち退きを求めることがあります。これはごくごく当たり前のことです。
しかし、特に問題を起こしていないのにも関わらず大家から立ち退きを要求された場合はどうすればいいのでしょうか?そのまま大人しく従うしかないのでしょうか?
この記事では自分に非がないのにも関わらず大家から立ち退きを要求されて困られている方が今後どうすればいいのか?という対処方法をご紹介します。

目次

1.大家の都合で立ち退き要求された!合意しないといけないですか?

ある日突然立ち退き請求されたら

立ち退き賃貸物件の入居者の権利は借地借家法という法律でしっかりと守られています。基本的に大家がむやみに入居者を退去させることはできません

ご自身に非がないのにも関わらず物件から退去を求められた場合、立ち退き料を請求することができます。立ち退き料とは物件から退去してもらう代償として大家が入居者に支払う金銭のことです。立ち退き料の意味合いや性質については後ほど詳しく解説します。

退去する意思がない、立ち退きの要求に納得いかないのであれば、まずは「簡単に退去しない」「大家のいいなりにならない」と決めて冷静に対応していくことが大切となります。

退去勧告は原則、期間満了の1年前から6ヶ月前

入居者を物件から退去させる、つまり賃貸借契約を解除する場合、大家は原則として契約期間満了の遅くとも6ヶ月前までには入居者に対して解除の申し入れを行う必要があります。これは借地借家法第27条に定められています。

(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090#Mp-At_27

入居者は退去するにあたって次の住居探しや引越しの準備・手配、各種手続きなどを行わなければなりません。「来週には出ていってほしい」と言われても対応できず、最悪の場合住処を失ってしまいます。そのため、少なくとも半年前まで、できれば1年前には通達して準備ができるようにしなければならないのです。

大家の都合で立ち退きを要求するには正当な事由が必要

前述のとおり、賃貸物件の大家はむやみに入居者を退去させることはできません。大家都合で立ち退きを要求するためには「正当な事由」が必要となります。これは借地借家法第28条に定められています。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090#Mp-At_28

「気に入らないから出ていってほしい」「理由は言えないけど出ていってほしい」ということは認められないのです。

立ち退きは要求できても、強行はできない。入居者の合意が必要

大家都合で入居者を退去させるには正当な理由があって、かつ遅くとも6ヶ月前までに退去を勧告することが前提となります。

その上で、入居者に立ち退きの意思がないのにも関わらず、退去を強制することはできません。入居者の合意が必要です。

2.大家が立ち退きを要求する正当な事由とは

正当な事由に該当するのは以下のようなもの

いくら立ち退き料を支払ったとしても、入居者に立ち退くべき正当な事由がなければ大家は立ち退きを要求することはできません。正当な事由としては以下のようなものが該当します。こうした事情がある場合、大家は入居者に立ち退き料を支払う約束をした上で立ち退きを要求することができます。

建物の老朽化による建て替え

まず建物が耐用年数を過ぎていて建て替えが必要になっているケースが挙げられます。入居者が住んでいては工事ができないからです。

ただし、「古くなっているから」「耐用年数を超えているから」という理由だけでは弱いです。損傷や劣化が著しく事故が発生するおそれが高い、耐震性能が劣っていて大地震が起きたときに倒壊するおそれがあるなど、入居者の安全が脅かされるほどの状態であれば正当な理由として認められる可能性があります

オーナーが居住として使用する

賃貸物件をオーナーが自分の住居として使用するケースも正当な理由として認められる可能性があります。ただし、これもすべてがすべて認められるわけではありません。同居家族が増えたケース(介護が必要となった親と同居するなど)、転勤などの突発的な理由で引っ越さなければならなくなったケースなど、緊急性が高い場合にのみ認められます

物件を所有することが不可能になった

大家が病気や怪我になったり金銭的な問題が発生したりした、あるいは家庭の事情などで海外へ移住したり遺産相続にともなって物件を手放したりするなど、物件の管理・所有をしていくことが困難となったケースも正当な理由として認められる可能性があります

建物の持ち主が帰ってくる

建物の所有者が別の場所で生活している間だけ自宅を賃貸物件として貸し出すというケースもあります。建物の持ち主が戻ってきて物件に居住する際には立ち退きを要求できる可能性があります

再開発が行われる

賃貸物件がある地域で再開発事業が行われ、物件を取り壊して新たにマンションや公共施設、商業施設などを建てる場合も、正当理由として認められる可能性があります
ただし、再開発は「どうしてもオーナーが物件を使用する必要がある」「どうしても物件を処分しなければならない」といった切羽詰まった状況とは違います。個人が生きていくためにどうしても必要というわけではなく、単に「より経済的に利用できたらいいなあ」という状況ですので、どうしても必要性の点で弱いということになります。
そのため、再開発を理由に立ち退きを迫られた場合、賃借人としては有利に交渉できる余地がより大きいといえます。

3.正当な事由があっても立ち退き料は必要

そもそも立ち退き料とは

悩む前述のとおり、立ち退き料とはこれまで家賃を支払ってくれた、落ち度がない入居者に立ち退いてもらう代償として大家が支払う金銭のことを指します。

入居者が物件を立ち退く場合、新しい住居を探して契約しなければなりません。引っ越しや各種手続きなども必要です。また、住み慣れた場所を離れ、新しい土地で過ごすことを余儀なくされるため、多少なりともストレスを抱えることになります。

立ち退き料には新居の契約や引越しに必要となる費用の補填、火災保険や地震保険などの保険料、インターネットや電話回線などの情報インフラ整備費用、経済的損失の補填(物件が店舗や事務所として使われている場合)、転居に伴う苦痛に対しての慰謝料などが含まれます。

立ち退き料を支払われることで正当事由を補充することになる

立ち退き料には正当な事由を補う性質があります。大家の主張が入居者を退去させる理由として弱いと判断されれば立ち退きは認められませんが、立ち退き料の支払いを約束することで立ち退きを認められる可能性が高くなります。要は弱い部分をお金で埋め合わせをするということです。

入居者の立場からすれば、大家が主張した理由に納得できない場合は、立ち退き料の支払いを請求できるということになります

立ち退き料を支払わなくて良いと判断している大家に注意しよう

賃貸物件の大家さんにはさまざまな人がいます。中には「正当な理由があるから立ち退き料は必要ない」と思い込んでいる大家や、そもそも大家都合で退去を求める際に立ち退き料を支払う必要があることを理解していない大家もいます。

こうした大家の言いなりになってしまうと、退去を求められた入居者が損をしてしまうことになります。大家都合で一方的に立ち退きを求められた場合、理由に納得できない場合は、はっきりと立ち退き料の支払いについて交渉することが大切です

自分自身に契約違反や迷惑行為があれば立ち退き料はもらえない

立ち退き料をもらえるのは、あくまで善良な入居者が大家都合で立ち退きを要求された場合に限られます。入居者自身に問題があって立ち退きを要求された場合は立ち退き料を請求することができません。

たとえば数カ月間家賃を滞納しているケース、騒音や悪臭を発生させたりゴミを放置したりするなどして近隣に迷惑をかける問題行為をしているケース、ペット禁止の契約になっているにもかかわらずペットを飼育するなどの契約違反を犯したケースなどが該当します。これらの行為を行った場合、大家と入居者の信頼関係が破壊されているとみなされ、大家は契約解除を求めることができます。

4.立ち退き料の相場とは

住居の場合目安は家賃の6ヵ月~10ヵ月分

相場法律で立ち退き料の金額は明確に決まっているわけではありません。したがって、相場はあるようでない、というのが前提となる大原則です。そのうえで敢えて目安を示すとすれば、住居の場合は家賃の6~12ヶ月程度といったところでしょう。新居に引っ越すための費用、その他退去を求める理由や入居者の状況などに応じて決められます。また、立ち退き料を支払う代わりに退去までの家賃を免除するなどの方法をとることも可能です。

立ち退き料を請求する際には、引越しや新居での生活準備に必要となった費用をしっかり把握した上で交渉することが大切です

減額になるような事情もある

大家都合で退去を求められたケースでも、立ち退き料が減額されてしまうことがあります。入居者がトラブルを起こしている場合、具体的には家賃を滞納していたり契約違反が発覚したりしたケースなどが挙げられます。とはいえ、大家都合で立ち退きを要求された場合は引越代がまったく出ないといったレベルの大幅な減額がされるような事例はあまりありません。

5.不安を感じたらプロに相談を

大家と信頼関係を構築して冷静に話し合いを

まずは大家さんと日頃から良好な関係を構築しておきましょう。前述のとおり、家賃滞納や迷惑行為、契約違反などのトラブルを起こしていると、立ち退き料を減額されてしまったり、そのトラブルを理由として立ち退きを求められてしまったりする場合もあります。逆に大家さんの立場としても、しっかりと家賃を払ってくれて問題も起こさない、善良な入居者を退去させるのは心苦しいものです

何もトラブルがなく、大家さんといい関係を築けていれば、交渉もスムーズに進められる可能性も高まります。交渉をする際には冷静になって、じっくりと話し合い条件をすり合わせしましょう。

交渉をスムーズに進めるにはプロに任せるのも選択肢のひとつ

大家が立ち退き料を支払わないと主張している場合や、金額に納得がいかない場合は、プロに相談してみるのもおすすめです。弁護士であれば法律知識があって交渉に慣れているので、仮に揉めていたとしても間に入ってうまくまとめてくれます。仮に法的措置をとることになっても、交渉の段階で弁護士が入っていれば証拠が揃っているため有利に進めることができます。

◆まとめ

ご自身にまったく非がなく、大家から一方的に立ち退きを求められた場合は、立ち退き料を請求できます。いくらもらえるかはケースバイケースなので、新居へ引っ越すためにいくらかかるのか?を明確にし、納得できる金額を請求しましょう。仮に揉めてしまった場合、どうしても納得できない場合は、プロに交渉を依頼するのも手です。

賃貸立ち退きトラブル相談窓口では、賃貸物件の立ち退き専門の弁護士が親身になってご相談者様のお話をお伺いし、解決に向けた最善策をご提案します。もちろん、立ち退き料の交渉に関してもお任せください。初回1時間の相談料は無料です。お困り事やお悩み事はお早めに相談してください。

弁護士監修記事

弁護士 菊地 智史

弁護士菊地 智史SATOSHI KIKUCHI

杉並総合法律事務所 所属
建物明渡し、更新料請求など借地借家関係の事件を多数解決
宅建士、敷金診断士の知識を活かし、様々なトラブルに対応

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