オーナー必見!家賃滞納で立ち退きを求めるときの対応いろは

2023年09月25日

はじめに

家賃トラブル入居者が家賃を滞納して困っている、家賃滞納が続く入居者を立ち退かせたいけど方法がわからない、逆ギレされて余計トラブルが酷くならないか心配……このようなお悩みをお持ちの賃貸物件のオーナー様、管理会社のご担当者様も少なくないかと思います。

この記事では家賃滞納が起こったときの対処法や家賃を回収する方法、そもそも家賃滞納を未然に防ぐためのポイントについて弁護士が解説スムーズに家賃トラブルを解消するために知っておきたいことについてもご説明します。

1.家賃滞納と契約

契約解除になるのは家賃滞納3ヶ月以上

一般的に賃貸物件のオーナー(貸主)と入居者(借主)は賃貸借契約を締結し、貸主には家賃を受け取れる権利(債権)が、借主には家賃を支払うという義務(債務)が発生します。家賃滞納は借主による債務不履行ということになり、契約解除、すなわち立ち退きの対象となりえます。

しかし、1ヶ月や2ヶ月家賃が支払われなかったからといって、すぐに賃貸借契約を解除することはできません。銀行口座から引き落としができなかった、借主が一時的に困窮していたなど、何らかの事情があって家賃が支払われなかった可能性もあるからです。

一般的に滞納期間が3ヶ月以上で、はじめて家賃を滞納していると認められて契約解除の対象となるのです。

信頼関係破壊の理論

信頼関係賃貸借契約を解除できる要件としては、貸主と借主との間に「信頼関係の破壊」が生じていると認められる必要があります。前述のとおり滞納期間が1~2ヶ月であれば過失や何らかの事情があって家賃が支払えなかった可能性も考えられるため、信頼関係が破壊されているかどうかは判断しづらいです。

しかし、善良な借主であれば滞納分を支払う、オーナーに事情を説明して交渉するなど、何らかのアクションを取るはずです。3ヶ月以上という長期間音沙汰なしで家賃滞納が続いていれば、信頼関係の破壊があると認められやすくなります

2.家賃滞納が起こったときの対処法

家賃滞納から立ち退きまでの流れ

家賃滞納から立ち退きまでの流れ家賃滞納から立ち退きまでの流れ

3ヶ月以上家賃滞納が続いたとしても、直ちに賃貸借契約を解除して退去させられるわけではありませんので注意が必要です

まずは、電話や手紙などで支払いの督促を行いましょう。これで家賃を支払ってくれたら問題ありません。滞納から1ヶ月~2ヶ月経っても支払いに応じてくれない場合は連帯保証人に連絡しましょう。それでも本人もしくは連帯保証人が滞納分の家賃を支払わない場合、内容証明郵便による督促手続きを行います。内容証明郵便であれば督促した記録が残るため、「聞いていない」「届いていない」という言い逃れができなくなります。

それでも支払いがなく滞納期間が3ヶ月を超えたら、まずは裁判以外の方法、具体的には物件を任意で明け渡すよう借主に申し入れます。それに応じなければいよいよ法的手続きに移り、契約解除、物件の明け渡しを求めて民事訴訟を起こします。

裁判を起こすことで借主は被告人となり、裁判所が判決という形で借主に退去を命令してくれます。仮にそれに従わなかった場合、強制執行官による強制執行が行われ、借主は物件を退去せざるを得なくなるのです。だいたいスムーズにいった場合、滞納から6ヶ月程度で強制的に滞納者を退去させることができます。

注意する3つのこと

以上のような流れで滞納者を物件から退去させることができますが、以下のような注意点を意識して進めていくことが大切です。

1.すばやく対処すること

滞納が発生したらなるべく早めに督促を行いましょう。対応が遅れると「少しくらい滞納しても何も言われない」「ここの大家は甘いからもう少し滞納してやろう」と借主がつけ込んでくる可能性があります。また、滞納期間が延びればそれだけ損害が大きくなってしまうでしょう。家賃の支払日までに入金が確認できなかったら、すぐに借主に連絡を取るようにしてください。

2.毅然と対応すること

督促した際に「待ってほしい」と言われる可能性も高いのですが、そこで引き下がってはいけません。「●日までに支払ってください」と期日を指定するか、「いつまでに支払えますか?」と確認しましょう。また、滞納が続く場合、法的手段に出ることを告げておくことも大切です。不安に思われるかもしれませんが、ここで毅然とした態度を取らないと、家賃滞納が長期間続くことになりかねません。

3.証拠を残すこと

裁判を左右するのは証拠です。督促の際には極力証拠を残すよう意識しましょう。前述した内容証明郵便での督促も証拠を残すために行います。他にも電話などでのやり取りをボイスレコーダーで残しておく、支払い日を書面で約束してもらうといった方法があります。

強制執行の進め方

強制執行の進め方強制執行の進め方

まずは強制執行に必要なものを準備しましょう。「債務名義」「執行文」「送達証明書」の3点を揃えます。債務名義とはオーナーが債権(明渡請求権など)を保有していることを証明する文書のことで、裁判所の判決文がこれにあたります。執行文は強制執行ができることを記された書類で、判決後に裁判所へ申し立てれば受け取ることができます。送達証明書とは判決が貸主に送付されたことを証明する書類で、やはりこちらも裁判所で発行してもらえます。

以上の書類がそろったら物件の所在地を所管する裁判所に強制執行を申し立てます。その後執行官と強制執行の日取りや執行補助者(強制執行を行う際に貸主の家財道具などの荷物を運び出す業者)について打ち合わせを行います。

申し立てから2週間程度経過したら、明渡し催告を行います。執行官、立会人、オーナー、執行補助者が物件に赴き、借主による占有状態が続いているかどうかを確認します。借主が占有している場合は明渡し期限と強制執行日を告知するため、公示書を物件に貼り付けます。

通常、明渡しの期限は1ヶ月に設定されます。それでも借主が期限までに退去しなかった場合はいよいよ断行です。執行官と執行補助者が物件に行き、物件内の荷物を運び出して借主を強制的に退去させます。鍵の交換を行ったら明渡し完了です。

3.滞納された家賃を回収する方法

滞納者は強制退去させられたけど家賃もしっかり回収したいと思われている方のために、ここからは滞納家賃を回収する方法についてご紹介します。

裁判外で交渉をする

口頭や手紙、内容証明郵便などで家賃の支払いを任意で求める方法です。これが一番穏便に済ませられる手段なので、まずは交渉を試みてみましょう。とはいえこれらの方法による督促には法的拘束力がありません。そもそも強制退去を命じられたような悪質な滞納者が素直に応じる可能性は低いです。

裁判外紛争解決手続き

裁判外紛争解決手続き(ADR)を活用するのも手です。あっせんや調停、仲裁など、第三者が入って滞納者と話し合いを行うので、ご自身が交渉するよりも成功する可能性は高くなります。しかし、やはりこちらに関しても法的拘束力がないため必ず滞納分の家賃を解消できる保証はありません

裁判手続き

一般的に滞納家賃の回収に関しても賃貸借契約の解除請求や明渡し請求のように裁判所に訴訟を起こします。家賃を支払うよう判決が出れば、やはり立ち退きと同じように強制執行を行うことができます。滞納者に給料や財産があれば差し押さえることが可能です。ただし、立ち退き裁判と同様の手間がかかります。

4.家賃滞納を未然に防ぐために

以上のように滞納者を立ち退かせる、滞納家賃を回収する方法はあるのですが、督促や裁判を行うとなると膨大な手間と費用がかかります。最初から家賃滞納を極力回避できるよう対策をとることが大切です。ここからはそのポイントについて見ていきましょう。

入居審査の基準を明確にする

連帯保証人署名家賃滞納を防ぐには、滞納するリスクが高い人を入居させないことに尽きます。まずは入居の基準を明確にし、しっかりと審査を行うことが重要です。家賃の金額に応じた年収があるか、連帯保証人がいるかどうかといった基準を設けましょう。特に過去にトラブルがあった場合は、審査基準をもっと厳しめに設定するよう見直す必要があるかもしれません。また、仲介会社頼りではなく、しっかりとオーナー自身でも審査を行うことが大切です。

入居者と申込み時点で接する

一般的に賃貸借契約の締結も含め入居手続きは不動産仲介会社や管理会社が行ってくれます。入居者の顔を知らないというオーナーの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、極力入居手続きの際にはオーナー自身が立ち会って、入居者と顔を合わせておきましょう。一度でも話したことがあると、その後コミュニケーションがとりやすくなります。また、直接会うことで入居者は「大家さんに迷惑をかけないようにしよう」という心理状態になり、家賃滞納や迷惑行為などがしづらくなります。

入金の確認をしっかり行う

前述のとおり家賃滞納は素早い対応が必要です。滞納して1ヶ月も2ヶ月も督促がないとなると、「少しくらい遅れてもいい」「ここの大家は甘い」と入居者が考える、いわゆる舐められる状態になります。逆に支払日の翌日にすぐに督促の電話がかかってきたりオーナーが尋ねてきたりするとなると、入居者にも緊張感が生まれます。可能なかぎり支払日当日に入金確認をしましょう

5.スムーズに家賃滞納トラブルを解消するために知っておきたいこと

直接交渉は避ける

家賃滞納を続けている入居者に立ち退きを求める場合、オーナーや管理会社の担当者の方が直接交渉するのは避けましょう。当事者同士が直接話しをすることでお互いに感情的になってしまい、「言った・言わない」のトラブルに発展するリスクがあります。法律の知識が不十分なため、話し合いが意図した結果に進まなかったり証拠を残しておかなかったりして、逆に不利になってしまうケースも多いです。

不動産トラブルの経験が豊富な弁護士に相談する

弁護士スムーズに立ち退き交渉を進めるのであれば弁護士に依頼するのがおすすめです。第三者であり法律知識が豊富な弁護士が介入すれば交渉を有利に進められ、滞納者にプレッシャーをかけることもできます。オーナーや管理会社が交渉に難航していたのに、弁護士が介入したとたんスムーズに退去に応じたという事例もよくあります。

また、弁護士は後々裁判になることも想定し、証拠の収集を意識しながら、オーナーにとって不利な証拠が残らないよう交渉にあたります。

弁護士へ依頼するメリットや、良い弁護士を選ぶために押さえておきたいポイント、立ち退き交渉を依頼する際に必要となる弁護士費用の相場については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひお読みください。

◆まとめ

悪質な滞納者を物件から立ち退かせる、家賃を支払わせるのは一筋縄ではいきません。督促しても家賃を支払わなかった場合は、ご自身で無理に交渉するのではなく弁護士への相談も検討してみてください。特に立ち退き案件に特化した弁護士であれば、関係法令の知識も豊富で実例もあるため、スムーズな解決につながります。弁護士費用が必要となるのがネックですが、これ以上トラブルが長続きすればそれ以上の損害が発生する可能性が高いです。

賃貸立ち退きトラブル相談窓口は賃貸の立ち退き問題に特化した法律事務所です。これまでさまざまなトラブルを解決してきました。任意交渉であれば最短1ヶ月での立ち退きも可能です初回相談1時間は無料なので、「まずは話を聞いてもらいたい」という方もぜひお気軽にご相談ください。

弁護士監修記事

弁護士 菊地 智史

弁護士菊地 智史SATOSHI KIKUCHI

杉並総合法律事務所 所属
建物明渡し、更新料請求など借地借家関係の事件を多数解決
宅建士、敷金診断士の知識を活かし、様々なトラブルに対応

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