【立ち退きトラブル】再開発で持ち家の立ち退きを要求されたら?

2024年03月27日

再開発によって街がさらに便利になり発展にもつながりますが、一方でそれによって住み慣れた家、苦労して建てた家から立ち退きを求められる方も少なからずいらっしゃいます。もしも持ち家から立ち退きを求められてしまったらどうすればいいのでしょうか?

この記事では立ち退きを求められた際の対処方法について解説します。なお、結論からいうと再開発による立ち退きに関するトラブルは個人での解決が非常に難しいため、弁護士に相談するのも一つの手段です。その理由についても今回の記事で詳しく見ていきましょう。

再開発によって持ち家の立ち退きを要求されたら

再開発事業者の担当者などから「立ち退いてください」と言われても、どうすればいいかわからず戸惑ってしまうのはしかたがないことです。まずは再開発で持ち家の立ち退きを要求された場合の対応方法についてご紹介します。

持ち家からすぐに立ち退くべき?

立ち退きを要求されてもすぐに立ち退く必要はありません。立ち退く場合は新居探しや引っ越しの手配・作業などで時間がかかります。事業者としてもそれらを織り込んだ上で立ち退きを要請しているはずです。

基本的に立ち退かせる側は立ち退き料などを支払って立ち退きに必要となるコストなどを補償して立ち退いてもらうようお願いすることになります。納得いかなければ立ち退かないという選択肢もあり得ます。

しかし、いつまでも居座り続けるというのは難しいのも事実です。裁判所に強制執行を申し立てられれば強制的に立ち退かせられる可能性もあります。元から住んでいる住人の権利は十分保証されるべきですが、一方で再開発が遅れれば地域社会全体がデメリットを被ることになります。再開発計画が進んでいる場合、都市計画法に基づいて明け渡し請求がなされ、裁判所による強制執行がなされれば、立ち退かざるを得なくなってしまうのです

持ち家が再開発対象になったとき最初にすること

いつまでもというわけではありませんが、立ち退きを要求されたとしても一定期間は留まることは可能です。その間に少しでも納得して立ち退きができるよう、有利に物事を進められるよう、以下のようなアクションを起こしましょう。

交渉を入念に行う

以上のように立ち退きを要求された場合、建物の再建築価格や解体費、引っ越し費用などの立ち退きに伴って発生する損失やコストの補填、精神的な苦痛に対する慰謝料という意味で立ち退き料が支払われるのが一般的です。

一戸建ての場合、公示価格や基準地価、築年数や用途、構造などの建物の状態によって決められます。

しかし、提示された立ち退き料が必ずしも立ち退きを要求された側にとっては適正な額とは限りません。まずは不動産の価格や解体費用などを不動産会社などに見積もってもらって、適正なものであるかどうかを検証しましょう

立ち退き料の金額に納得いかなければ事業者と交渉する余地があります。何度も交渉を重ねながら、主張すべきところは主張し、妥協できるところは妥協して、折り合いをつけていきます。

不動産知識が豊富な専門家に相談する

立ち退き交渉を進めるためには不動産や法律の知識が必須となります。事業者の担当者は不動産や法律にも熟知しています。また、彼らは交渉のプロであり、過去にも同じような立ち退き交渉を何度も経験しています。一般の方が交渉にあたったとしても言いくるめられてしまう可能性が非常に高いです。

また、交渉が長引いてしまうと事業者の顧問弁護士が介入してくる、強制執行の手続きをとられるなどして、ますます不利な状況に追い込まれてしまうおそれもあります。

不動産と法律の知識が豊富で、かつ交渉に慣れている専門家の手を借りるのも一つの手段です。

持ち家の立ち退きにおける2つの対処法

再開発によって持ち家の立ち退きを要求された場合、一般的には「権利変換」もしくは「立ち退き料」のいずれかで対処することになります。ここからはこの2つの方法についてくわしくご説明します。

【対処法1】権利変換

立ち退きを要求された際には、まず権利変換を行う方向で進めていくのが一般的です。権利変換の意味や考え方、権利変換で得られるものについて見ていきましょう。

権利変換とは

権利変換とは、現在所有している土地や建物に関する権利を明け渡す代わりに、新しい不動産の権利を同等分取得することです。たとえば新しいマンションを建設するために立ち退きを求められた場合、建て替え後にそれ以前に住んでいた家と同等の広さや価値の部屋に入居する権利が得られます。

再開発にともなう立ち退きにおいても権利変換は可能です。持ち家を明け渡す代わりとして、それと同等の権利を新たに取得することができます。ただし、以前所有していた権利よりも極端に金額の差が生じるもの、あるいは関係権利者相互間に不均衡が生じるようなものに関しては権利変換が認められません。分譲マンションの例でいえば、これまで1,000万円の価値がある家に住んでいたが、立ち退くからといって5,000万円の部屋を要求するといったことはできないのです。

権利変換で得られるもの

再開発にともない立ち退きを求められた場合、権利変換すればマンションやアパート、ビルなど新しい建物の所有権の一部が得られる可能性があります。また、土地に関しては所有権を手放した後に、複数の土地を合筆(土地同士を合併して登記上1つの敷地とすること)します。そのため、他の所有者と共同で所有するか、建物の一部を所有することになるでしょう

たとえば、立ち退く持ち家の価値が3,000万円である場合、再開発後に建てられた建物、あるいは合筆された土地のうち、3,000万円分くらいの権利が与えられることになります。また、建物に関しては同等の広さのものが取得可能です。

なお、再開発後に建物や土地の権利を所有しない場合は、前述のとおり持ち家の価値に応じて補償料(立ち退き料)が支払われるのが一般的です。

【対処法2】立ち退き料をもらう

権利変換に納得できない場合、あるいは権利変換を行わない場合は、立ち退き料を受け取るという方向で交渉を進めていくことになります。ここからは立ち退き料をもらえるケースや相場について考えていきましょう。

持ち家で立ち退き料がもらえるケース

まず挙げられるのは土地区画整理事業による立ち退きを求められたケースです。土地区画整理事業とは都市の計画的な発展を目的とした開発事業で、道路や公園、上下水道などの整備が行われます。これらは個人が所有することができないため、権利変換ではなく立ち退き料で対応することになります。非常に公共性が高く、国土交通省や都道府県知事の許可のもと事業が行われるため、立ち退き拒否はきわめて難しいです。

都市計画道路による立ち退きでも立ち退き料が支払われます。都市計画道路とは都市の交通インフラの要を担う幹線道路のことを指し、具体的には国道やバイパス道路などが挙げられます。バイパス道路の新設や国道の拡幅などは都市計画法に基づいて行われます。やはり、道路も個人が所有できないため、立ち退き料が支払われることになります。

また、借地(借りた土地)に持ち家を建てた場合は、借地契約解除による立ち退きが発生することがあります。一般的に借地であっても、そこに賃借人(土地を借りている人)の建物が建っていた場合、賃貸人(地主)は無闇矢鱈に契約を解除して立ち退かせることはできません。しかし、賃貸人が再開発工事など何らかの理由で賃借人(土地を借りている人)に対して立ち退きを求める場合、立ち退き料が支払われます。

再開発による立ち退き料の相場

先ほどもご説明したように、立ち退き料は建物の再建築費用、建物の解体費、引っ越し費や仮住まいの家賃などの立ち退きに必要となるコスト、精神的な苦痛による慰謝料などが含まれます

建物の再建築費用は現在の持ち家の価値、具体的には公示価格や基準地価、築年数や用途、構造、建物の状態などによって決まります。たとえば、建物の価値が3,000万円であれば、同等の建物を建てる費用として3,000万円が支払われることになります。

解体費は一般的な一軒家(30坪、木造2階建て)であれば100~120万円程度になります。引っ越し費用は20~30万円程度、仮住まいの家賃は7~8万円の物件を12ヶ月分借りるとして70~80万円程度が目安です。再建築費用+190~230万円くらいが、立ち退きに必要なコストの補償として支払われることになります。

上記のように立ち退きに要する費用を負担してもらったとしても、長年住んできた家あるいは先祖代々受け継いできたような不動産はすんなり手放せるようなものではありません。住み慣れた家や土地を離れて新しい場所で生活をしなければならず大きなストレスになります。場合によっては転職や退職、廃業、子どもの場合は転校や転園を余儀なくされます。こうした立ち退きによって生じうる精神的な苦痛に対する迷惑料や慰謝料分も加わります。

正直なところ、立ち退き料は具体的に「◯◯円」というように相場を示すのは非常に難しいです。特に建物の価値や精神的苦痛の度合いは一様ではありません。事業者に立ち退き料の額を提示されて、当初は「こんなにもらえるの?」と思って快諾しても、実際に立ち退きを進めていったら全然足りなかった・見合う額ではなかったというケースもあり得ます。

適正な立ち退き料の額を知るという意味でも、専門家にご相談されることをおすすめします。

分譲マンションでも立ち退き料はもらえる?

分譲マンションに住んでいて老朽化によって建て替えが行われるような場合には、立ち退き料は支払われません。しかし、立ち退きに応じた上である程度の費用を負担することで、建て替え後のマンションに入居することは可能です。

今住んでいるマンションが取り壊されてまったく新しいマンションが建設される場合、権利変換や立ち退き料の支払い対象となります。権利変換では一軒家の場合と同じく、同等の権利を取得することが可能です。立ち退き料の場合は、新しいマンションへの入居費用と仮住まいの家賃、引っ越し費用、迷惑料や慰謝料などが含まれます。

再開発による立ち退きトラブルは
弁護士にご相談ください!

再開発によって持ち家からの立ち退きを求められた場合、権利変換か立ち退き料の受け取りで対応することになります。しかし、受け取れる権利や金額が妥当なものであるかどうかは判断が難しいです。また、交渉するにしても不動産や法律の知識がないと不利になってしまうおそれがあります。

そこで、立ち退きの交渉は法律の専門家であり、交渉のプロである弁護士にお任せください。賃貸立ち退きトラブルには不動産に詳しい弁護士が在籍しており、これまでさまざまなトラブルの解決にあたってきました。もちろん、再開発による立ち退き交渉の実績も豊富です。揉めごとやトラブルがない、スムーズな解決を目指します。

初回1時間は相談無料です。持ち家からの立ち退きを要求されていて困られている方、相手の提案には納得できないけどスムーズに交渉を進めたいという方は、ぜひご相談ください。

弁護士監修記事

弁護士 菊地 智史

弁護士菊地 智史SATOSHI KIKUCHI

杉並総合法律事務所 所属
建物明渡し、更新料請求など借地借家関係の事件を多数解決
宅建士、敷金診断士の知識を活かし、様々なトラブルに対応

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